AIの翻訳
英文は、本書の「はじめに(PREFACE)」の冒頭の一文です。(示した翻訳例は、これに続く冒頭段落の翻訳の抜粋です。)
ChatGPT(b) まず最初に、この本を、顔や木や雲などの描き方の「こつ」や、デッサン上達への近道、あるいは祖母の時代の作画教師たちに好まれ、今なお多くの人に愛されているような種々の秘訣が載っているのではないかと期待して手に取った学生が、失望するであろうことをあらかじめお断りしておきたい。
Gemini 3 (a) まず初めに、顔や樹木、あるいは雲などの描き方の「コツ(wrinkles)」や、上達への近道、あるいは私たちの祖母の時代の絵画教師たちが重宝し、今なお多くの人々に愛されてやまない「小手先の技」を見つけるつもりで本書を手にとった読者が、のちに抱くであろう失望をあらかじめ予想しておくことをお許しいただきたい。
Gemini 3 (b) まずはじめに、顔や木、あるいは雲といったものの描き方の「コツ」や、上達への近道、あるいはかつて我々の祖母たちの時代の絵画教師たちがもてはやし、今なお多くの人々に愛されているような「小手先のテクニック」を見つけるつもりで本書を手にとった方がいれば、あらかじめその期待を裏切ることになるだろうと申し上げておかねばなりません。
Sonnet 4.6(a) まず最初に、この本を開いた読者の方々に、あらかじめご了承いただきたいことがあります。顔や木、雲などの描き方の「コツ」、デッサンの上達への近道、あるいはかつて祖母の時代の絵の先生たちの間で流行し、今なお多くの人々に愛されているようなテクニックを期待してこの本を手に取られた方は、残念ながらその期待に応えることはできません。
Sonnet 4.6(b) まず最初に、この本を開いた読者が抱くかもしれない期待に、あらかじめお断りを申し上げておきたい。顔や木、雲などの描き方に関する「コツ」、デッサンの上達への近道、あるいはかつて祖母たちの時代の画塾の先生方の間で広く流行し、今もなお多くの人々に愛されているような「テクニック」を求めてこの本を手に取った方は、期待外れに終わるだろう。
どうでしょうか。条件はすべて同じで、同一の英文を提示して翻訳を依頼した結果です。(a)、(b)とあるのは、各AIが最初の翻訳をした直後に、新たなチャットで同じ英文の翻訳をして、その順番に(a)、(b)と振ったものです。これらの翻訳からだけではAIの翻訳力の優劣を判断するのは難しいかもしりません。
少し詳しく見てみると、まず、この長い一文をどのように訳すかという問題があります。Sonnet 4.6だけが文を2つに区切り、英文の語順に近づけています。こうすることで、長い文でも述部が最後に登場するという日本語の分かりにくさを回避しています。
また、「student」を「学生」と訳したのはChatGPTだけで、他は「方」あるいは「読者」としています。どれが良いか判断が難しいところですが、日本語で書かれた本の冒頭の一文としては、「読者」とする方が自然かもしれません。
同じ英文を二度翻訳すると(上の訳(a)訳と(b)訳)、直後でもかなり違った結果になるのは意外でした。ChatGPTでは、「 」のつけ方が修正されていますし、Gemini 3では「のちに抱くであろう失望をあらかじめ予想しておくことをお許しいただきたい」というあまりにも直訳的な表現が修正されて、不自然な箇所が改善されています。Sonnet 4.6にも細かい違いはありますが、どちらも安定した訳になっていると思います。
AIによる添削
次に、AIによるそれぞれの添削例を示します。添削したのは、同じ冒頭の一文に対する私の訳です。各AIによるコメントも抜粋して示します。
拙訳 はじめに申し上げておくと、顔や木や雲など何であれ描き方の「コツ」や、素描上達への近道、あるいは祖母の時代、素描の達人たちが愛用し、今でも多くの人が好む小手先のわざといったものを見付けようと期待を持ってこの本を開いた学生はがっかりするのではないかと思う。
ChatGPTによる添削
・「wrinkles」「tricks」の処理→「コツ」+「秘訣」+「小手先の技」と段階をそろえるとよい
Gemini 3による添削
Sonnet 4.6による添削
いかがでしょうか。AIのコメントには参考になるものが多くあります。AIは、訳文の正確さだけでなく、原文の文章の断定の強さの程度や、言い回しのニュアンス、言葉の響きなども考慮して訳語や訳文を案出しようとしています。
では、AIによる添削訳はどうでしょうか。AIが最初から翻訳したもと比較すると、添削訳の方が優れているとは言い難い。私の拙訳と比べても、必ずしも良くなっているとは言えないかもしれません。実際に第1章で試みたところ、AIの添削訳は私の訳出の誤りを引きずることさえありました。
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